2024.06.24 コラム
ID5 IDを復号化してみた
はじめに
2024年4月下旬、Google Chromeにおいて3度目となる3rd Party Cookie廃止の延期が発表されました。この延期により、結果としてChromeでの3rd Party Cookie廃止に猶予ができる形となりましたが、今後主要4ブラウザ(Chrome、Safari、Edge、Firefox)全てにおいて3rd Party Cookieが制限され、広告配信や顧客分析など、従来のデジタルマーケティングに大きな影響が生じることとなります。
このような背景から、3rd Party Cookieに代わる新しい代替ソリューションを検討する必要があります。
その1つとして注目されているのがユニバーサルIDです。ユニバーサルIDとは、様々なサービスやシステム間で使える共通したIDの総称です。
このユニバーサルIDを用いて、各企業にて新たなソリューションの開発が行われており、3rd Party Cookieに依存せずに、ユーザーを識別し保存することができる新たな手法として活用されはじめています。
弊社では、複数存在するユニバーサルIDからID5社が提供する「ID5 ID」を選択し導入しています。
※リリース記事はこちら
ID5 IDとは
ID5 IDは、ID5社が提供する、3rd Party Cookieに依存せずに利用できるユニバーサルIDです。
世界中で採用されており、 グローバルのリーチは月間70億デバイスと、ユニバーサルIDとして高いシェアを占めています。
ID5 IDは、Eメールアドレス、会員IDなどの個人を特定できる確定の情報から生成される「確定型情報」と、IPアドレス、ブラウザなど個人を特定できない推定の情報から生成される「推定型情報」のハイブリッドモデルで構成されています。
DataCurrentでは、上記の内「推定型情報」を用いた活用を進めています。
※詳しいID5の解説については、弊社コラム「Cookieに依存しないための代替ソリューションとは?ユニバーサルID「ID5」に迫る」をご確認ください。
このID5 IDを用いることで、3rd Party Cookieで行っていたWebユーザーの分析や広告配信などを引き続き行うことが可能になります。
例えば弊社では、計測タグを設置することで、ID5 IDベースでアクセスログを収集し、ユーザー行動を追跡・セグメンテーションできる環境を構築しています。
これにより広告でのターゲティングやサイト訪問者の分析を実行、マーケティング施策効果の最大化を実現しています。
ID5 IDで同一ユーザー認識をするため必要なこと
前述のような、ID5 IDの多くのメリットを最大限に活用するためには、暗号化されたIDを正確に復号化するプロセスが重要です。
これはID5社が、ID使用の権利を持つプラットフォームのみが適切にIDを扱えるようにするために、IDを暗号化した状態で提供しているためです。
そのため、IDを利用する際にはIDの復号化処理をする必要があります。
例えば、同一ユーザーがサイトに再訪した際でも、暗号化された状態のID5 IDでは、一見異なるIDが振られるため同一ユーザーと判定することはできません。しかし、復号化することでバラバラだったIDが1つの復号化されたID5 IDとなり、同一ユーザーとして扱うことが可能になります。
そこで今回は、3つの暗号化されたID5 IDに対して復号化を行い、それらが同一ユーザーである例をご紹介します。
復号化の方法
ID取得から復号化までのフローは企業によって様々ですが、弊社ではおおまかに以下のような流れで復号化を行っています。
①暗号化されたID5 IDがデータレイクにたまる
②暗号化されたID5 IDをBQリモート関数(API)を使って復号化
①暗号化されたID5 IDがデータレイクにたまる
まずは、ID5 IDのタグをサイトに埋め込みデータを取得できる状態にします。
ユーザーがサイトに訪れると、タグが発火し、ID5 APIによってブラウザのローカルストレージに暗号化された「ID5 ID」が保存されます。
②暗号化されたID5 IDをBQリモート関数(API)を使って復号化
暗号化されたID5IDを復号化するには、ID5 APIを使って復号化処理を行う必要があります。
弊社では、BigQueryのリモート関数機能を用いて、APIを実行できる関数を事前に用意し、これを用いて複合化を行っています。
※BigQueryリモート関数は、SQL実行時に呼び出せる外部関数です。今回のID5 IDの復号化のように通常のBigQuery内で完結できない処理もリモート関数を使うことで実装が可能です。
復号化実行クエリの例
・このクエリでは、BigQueryのリモート関数を使用して、暗号化されたID5 IDを復号化します。
・decrypt_id5関数は事前にリモート関数機能で定義されたID5 APIを実行する関数のため、このクエリはあくまで弊社環境での例となります。
SELECT `Project名.Dataset名`.decrypt_id5('ID5*暗号化されたID5 ID') AS id5_id
例として3つの暗号化されているID5 IDを上記のクエリを用いて復号化します。
暗号化されている3つのID5 IDを復号化してみる
実行結果
※復号化できないIDに該当する場合は復号化が行えない場合もございます。
暗号化された状態では、3つのID5 IDがバラバラでしたが、復号化することで同じIDとなり、同一ユーザーであることがわかりました。
まとめ
今回のコラムでは、ユニバーサルIDの1つであるID5社が提供するID5 IDの復号化を行ってみました。
暗号化された状態では、同一ユーザーであってもユーザーを識別することができませんが、今回行った復号化を行うことで、同一ユーザーとして識別できるようになりました。
この復号化されたIDを用いることで、サイト訪問者の分析や広告配信に使えるようになります。
弊社では、ID5IDを利用してサイト訪問者の再訪問時にも同一ユーザーとして識別し、広告配信やドメインを跨いだ分析等に活用することを支援しています。Cookie規制後のデータ活用についてご相談がございましたら、ぜひ弊社にお問い合わせください。
▼関連ダウンロード資料
弊社では、Safari 16.4アップデートやITPによる最新のCookie規制に対応した独自のServer Side Cookie(以下、「SSC」)を発行することで、上記規制を受けることなく1st Party Cookieの有効期限を最大限延長して利用できるスキームをリリースしております。
これにより、アクセルログからのユーザーのWEB行動の解析や、同一組織内でのクロスドメイントラッキングが可能となり、自社保有のデータの利活用を最大限に推進いたします。
■DataCurrentについて
生活者主体の考え方に基づくデータ活用を推進する専門会社として2019年6月3日に設立いたしました。
CDP導入支援のみならず、データ戦略設計から分析、広告配信、データプライバシーに関するアドバイザーサービス、新事業立ち上げサポートまで お客様の課題に沿ったデータ活用推進に必要なサービスを一貫してご提供しています。
今後もDataCurrentは、データ基盤の構築支援からビジネスでの活用まで、データを起点とした戦略立案・実行をワンストップで支援し、企業のデータ活用の推進に貢献して参ります。
【本件またはリリースに関するお問い合わせ先】
DataCurrent 広報
E-mail:info@datacurrent.co.jp