2021.04.15 コラム
【テックコラム】テスト開始!3rd party Cookie代替機能の1つ「FLoC」とは?
● はじめに
こんにちは!DataCurrent のジョージです。
DataCurrentではこれまで様々な事例や検証結果を公開してきました。この度、より幅広い技術的なテーマを時にはテクニカルに、時にはかみ砕いた形でご紹介するテックコラムを始める事となりました。不定期更新ですが、よろしくお願いします。
さて、デジタルマーケティング領域において 3rd party Cookie やその代替(いわゆるCookieレス)の動向は目が離せないですよね。最近では Google が中心となって 開発を進めている Privacy Sandbox への注目度も高まっています。
でもあまりまとまった情報がなく、あってもテクニカルな解説が多いので結局よくわらかない、みたいな状況の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、Privacy Sandbox のうち、オーディエンスターゲティングを実現する Federated Learning of Cohorts(FLoC)をできるだけ簡潔に、活用イメージや現在の開発状況を交えてご紹介します。
本日お伝えする内容は以下の8つです。
・FLoC ってなに?
・Cohort ID は何個付与される?
・Cohort ID の更新頻度は?
・プライバシーの懸念はないの?
・どんな事ができるの?
・現在の開発状況
・FLoCの確認方法
・弊社の対応
※本コラムの内容は2021年4月14日時点の内容である点にご注意ください。
● FLoC ってなに?
Federated Learning of Cohorts の略で、ユーザーのWEB行動履歴をブラウザに蓄積し、機械学習によって似た興味・関心を持つユーザー群をグルーピングする機能です。
3rd party Cookie は1人1人のユーザーに ID を付与する事で個人を識別し、サーバー側で行動履歴を保持してユーザーをセグメント化する事が多いですが、FLoC はブラウザ側にデータを保持して分類する点と、個人ではなくグループで捉える点が特徴になります。
FLoCではグループのことを Cohort と呼び、Cohort を識別するIDは Cohort IDと呼ばれています。
なお、今回のコラムは実用的な話を中心とするため、あまり技術的な説明はしません。より技術的な詳細を知りたい方は、WICG の GitHubリポジトリ をご確認ください。
● Cohort ID は何個付与される?
各ブラウザに1個付与されます。
よくセグメントID と誤解されるので、「え、1個しかないの!?」と驚かれることがあるのですが、Cohort ID は Cookie ID に代わるものなので、1個だけになります。
● Cohort ID の更新頻度は?
現時点では7日ごとに再計算されることになっています。
今後のテストで FLoC の有効性が評価されることになっており、更新頻度は変わる可能性があります。
● プライバシーの懸念はないの?
3rd party Cookie を廃止する目的がプライバシー保護ですから、FLoC はどうなの?というのは気になるところですよね。
下記のような配慮がされている事から、プライバシーは保護されていると開発者は主張しています。
- 1つの Cohort は数千人単位以上で構成され、個人の特定に至らない
- 人種や政治的イデオロギー、性的指向等のデリケートなカテゴリーを明らかにする Cohort はブロックされるか、再計算されてデリケートカテゴリとの相関性を減少させる
- ブラウザの設定画面にオン・オフ機能が実装予定
一方で、フィンガープリントの材料になるといった懸念等も指摘されており、プライバシー保護に関する議論の余地はまだありそうです。
● どんな事ができるの?
FLoC の話をすると「で、実際何ができるの?」とよく聞かれます。 ある意味ここが一番重要なところで、知りたい所ですよね。
先述の通り、Cohort ID は セグメントID ではありません。 Cohortは似た興味・関心を持つと推定されたユーザーグループですが、何に興味・関心を持つと推定されたのかまでは公開されません。
つまり、Cohort ID に対する Cohort Name(セグメント名のようなもの)といったマスターデータのようなものはありません。
ではどうするのかというと、Cohort ID と保有するデータを突き合わせることで初めて意味付けが可能になるというわけです。
その結果、例えば以下のような活用方法があります。
- 広告主サイトの訪問者に多い Cohort ID に対し、広告を表示する
- Cohort ID 別のコンバージョン予測
- Cohort ID 毎のコンテンツ最適化
保有データが多いほど活用の幅が広がるという事ですね。
● 現在の開発状況
執筆時点(2021年4月14日)で、オーストラリア、ブラジル、カナダ、インド、インドネシア、日本、メキシコ、ニュージーランド、フィリピン、米国の0.5%のユーザーで最初のテストが開始されています。機械学習モデルをトレーニングするには少ないとの理由から、5%への引き上げが検討されており、規模はもう少し拡大するかもしれません。
3rd party cookie をブロックしているユーザーはテスト対象外ですが、Chrome 90 から設定画面で明示的に拒否する事も可能になりました。参考までにその手順を紹介します。
※試験機能を有効にすると、ブラウザのデータが失われたり、セキュリティやプライバシーが侵害されたりする可能性があるため、ご注意ください。
<Privacy Sandboxの有効/無効設定方法>
1.試験機能である「Privacy Sandbox Settings」をEnabled にする
Chrome のアドレスバーに「chrome://flags」と入力する事で試験機能の設定画面が表示されます。
2.設定画面の「プライバシーとセキュリティ」の中から 「プライバシーサンドボックス」を選択
3.有効/無効を選択する
● FLoCのテスト方法
FLoC は Chrome 89 からテスト利用が可能になっていますので、テスト対象者でなくても実際に試してみたいという方は、以下の手順でご自身の Chrome に付与されている Cohort ID を確認する事ができます。
<全体の流れ>
全体の流れは以下の通りです。
1. Chrome のバージョン確認
2. Chromeアイコンのリンク先にコマンドを入れて起動
3. 開発者ツールで Cohort ID を取得
4. Chromeアイコンのリンク先を戻す
では、詳細な手順をご紹介します。
<詳細説明>
1.Chrome のバージョン確認
Chrome のアドレスバーに「chrome://settings/help」と入力し、バージョンを確認します。
89以上の場合 → そのまま次へ
88以下の場合 → 最新版にアップデートしてから次へ
2.Chromeアイコンのリンク先にコマンドを入れて起動
全ての Chrome を閉じた後、--enable-blink-features=InterestCohortAPI
を付けて Chrome を起動します。
Chrome のショートカットアイコンのプロパティから、「リンク先」の末尾に挿入する方法が手軽です。
※最後に戻す必要があるので、元のリンク先は必ず控えておいてください
Chrome 起動時に下記のメッセージが表示されれば FLoC が有効です。
※全ての Chrome ウインドウを閉じてから起動しないと有効にならない点にご注意ください。
3.開発者ツールで Cohort ID を取得
F12等で開発者ツールを起動し、「Console」に以下を入力して実行します。
cohort = await document.interestCohort();
表示された ID がそのブラウザに割り当てられた Cohort ID です
4.Chromeアイコンのリンク先を戻す
2 で変更したリンク先を元に戻して終了です。
自分の Chrome に付与されている Cohort ID はわかりましたか? 同じ ID の人がいたら、あなたと似た興味・関心を持つ人かもしれません。
● 弊社の対応
弊社では事業会社様のデジタルマーケティング活動の支援を行っています。多種多様なデータを扱うこともできるため、FLoC を活用した施策の提案や実行が可能です。
ご興味ございましたらお問い合わせください。
本件に関するお問い合わせは下記にて承ります。
株式会社DataCurrent
info@datacurrent.co.jp