2026.01.20 コラム
【テックコラム】Dataplex Universal Catalog における「データ プロダクト」解説 — データを“管理”から“提供”へ —
1. はじめに:なぜ「データ プロダクト」が必要なのか
こんにちは!ジョージです。
データ活用が企業競争力を左右する時代において、多くの組織はすでに大量のデータを保有しています。一方で、「どのデータを使えばよいかわからない」「品質や更新頻度が不明」「アクセス申請に時間がかかる」といった課題は依然として解消されていないケースも多くあります。
これらの課題は、データが「技術的な資産 」としては管理されていても、「ビジネスで再利用可能な資産」 として整理・提供されていないことに起因します。
Google Cloud の Dataplex Universal Catalog における「データ プロダクト」 は、こうした課題に対し、「データを製品として提供する」という明確な思想をもとに設計された新しいアプローチです。本記事では、その仕組みと価値を技術的観点から解説します。
2. 「データ プロダクト」とは何か
Dataplex のデータ プロダクトは単なるテーブルの集合ではなく、次のような特徴を持ちます。
- 特定のビジネス用途に向けてキュレーションされている
- 信頼性・品質・利用条件が明示されている
- 利用者がセルフサービスで発見・利用できる
重要なのはデータ構造ではなく「利用観点での文脈」を起点にしている点です。
つまりデータ プロダクトは、
- 「どのテーブルか」ではなく
- 「どんな意思決定・分析のためのデータか」
を軸に定義されます。
3. データ プロダクトの構成要素
3.1 アセット(Assets)
アセットは、データ プロダクトを構成する実体データです。
- BigQuery テーブル
- BigQuery ビュー
- BigQuery データセット
が対象になります。
ポイントは、データプロダクトとアセットが1対1である必要はないことです。
分析・利用の観点で意味のある単位に定義することができます。
例えば、以下のアセットをまとめて「売上分析データ プロダクト」として提供可能です。
- 顧客マスタテーブル
- 商品マスタテーブル
- 注文テーブル
3.2 アクセス グループ(Access Groups)
アクセス グループは、データ プロダクト単位でアクセス権を管理するための仕組みです。
Google グループと IAM を組み合わせることで、利用者はデータ プロダクトへのアクセスを申請するだけで、必要な権限を一括して取得できます。
これにより、従来の「テーブル単位での個別権限管理」から解放されます。
データ提供の最小単位が「テーブル」から「プロダクト」に変わる という点は、運用設計上とても重要です。
3.3 契約(Contract)
契約(Contract)は、データ プロダクトの品質や利用条件を明文化する重要な要素です。
例えば、以下を定義することで、提供者と利用者の間に明確な合意を形成します。
- 更新頻度(例:日次 / リアルタイム)
- 期待される品質レベル
- 想定ユースケース
これは単なる説明文ではなく、「この条件なら安心して使ってよい」という合意形成 の役割を果たします。
AI や自動分析の文脈では、 人間が暗黙知で補っていた前提条件を明文化する点で特に重要です。
3.4 コンテキスト情報(Documentation / Metadata)
データ プロダクトには、技術情報だけでなくビジネス文脈も付与されます。
- データの背景
- ビジネス定義
- KPI との関係
- よくある誤解や注意点
これにより、初めて触れる利用者でも「このデータをどう使うべきか」を理解しやすくなります。
4. データ プロダクトの利用方法
4.1 データ提供者視点
実際のデータ プロダクトの作成を紹介します。
Dataplex の画面から以下のステップで構成していきます。
- データプロダクトの名称や説明、連絡先などを定義

- 対象アセットの登録

- アクセス グループと権限の設定

- 契約の設定

- アスペクトの設定

上記にてデータプロダクトが作成されます。
4.2 データ利用者視点
データ利用者は以下のステップでデータの利用が可能になります。
- Dataplex Universal Catalog 上でデータ プロダクトを検索
- 利用したいデータを申請

- データ提供者が申請内容を承認
承認後は、すぐにクエリや分析に利用できるため、データ探索から活用までのリードタイムが大幅に短縮されます。
5. データ プロダクトがもたらす利便性
Dataplex のデータ プロダクトは、日々のデータ活用現場において、主に以下の3つの価値を提供します 。
- データ発見性の向上
特定のビジネスコンテキストに沿ってキュレーションされているため、利用者は膨大なテーブル群から迷うことなく、目的のデータを素早く見つけ出すことができます 。
- セルフサービス分析によるリードタイムの短縮
データ プロダクト単位での一括権限管理と申請フローにより、テーブルごとに個別申請を行う手間が省けます 。承認後はすぐにクエリや分析に利用できるため、データ探索から活用までの期間が大幅に短縮されることが期待できます 。
- 「信頼できるデータ」の判断
「契約(Contract)」によって更新頻度や品質レベルが明文化されているため、利用者は「このデータは信頼できるか」を個別に確認することなく、安心して分析に集中できます 。
6. 制限事項と注意点
現時点では、対応アセットやリージョン、スケール面での制約が存在します。
導入にあたっては、Preview 機能である点を踏まえ、段階的な適用が推奨されます。
7. まとめ
Dataplex Universal Catalog のデータ プロダクトは、単なる新しい管理単位ではなく、データ基盤の設計思想そのものを変えるアプローチです。
本記事のポイントは、次の3点に集約できます。
① データは「保管するもの」から「提供するもの」へ
これまでのデータ基盤は、データを正しく格納・処理することが主な役割でした 。
データ プロダクトは、誰がどの用途で使うのか、どの品質で提供するのかを明示し、使われることを前提にデータを設計します 。
これにより、データ基盤は単なる保管庫ではなく、組織内に価値を届ける「データ提供基盤」へと進化します 。
② ガバナンスとスピードを両立できる設計
従来、統制を強めるとスピードが落ち、速さを優先すると統制が崩れるというトレードオフがありました 。
データ プロダクトでは、アクセス制御、契約、コンテキスト情報をプロダクト単位で一体化することで、このトレードオフを運用ではなく「設計」によって解消します。
③ AI 時代のデータ基盤としての必然性
分析や生成 AI がデータを直接扱う現代では、データの信頼性を明示する仕組みが不可欠です 。
データ プロダクトは、AI が安全にデータを扱うための最小単位のインターフェースとして機能し、今後の自律的なエージェント活用を見据えた際にも、極めて重要な基盤要素となります 。
Dataplex Universal Catalog のデータ プロダクトは、データを「管理」するためだけの機能ではありません 。
データを価値として届け続けるための仕組みとして、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
最後に
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本件に関するお問い合わせは下記にて承ります。
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