2021.08.19 コラム
【データ連携担当のトラブルメモ】#7. 大文字小文字に要注意
● はじめに
本シリーズでは「データ連携担当のトラブルメモ」と題して、DataCurrent社データ連携担当として携わってきた、データ連携にまつわる様々なトラブルやヒヤリ・ハットを振り返り、その原因究明のポイントや対策などを備忘録的に整理してまいります。
非常に基礎的な内容も含まれると思いますが、それゆえにこれからデータ連携領域を担当されるという方々の一助になるようなものにできればと思います。
● 今回のデータ連携担当(プロフィール)
田中 芳樹
2008年4月に株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)入社。Google Analyticsを始めとしたアクセス解析ツールやKrux、BlueKaiなどのDMPの実装・運用領域を担務。2021年2月よりデータの利活用を推進するコンサルティング会社「株式会社DataCurrent」に出向し、事業会社の基盤構築・運用やオーディエンスデータの連携を担当。
● 第7回 大文字小文字に要注意
あたり前の話かもしれないけれど
データを扱うときは大文字小文字に注意しましょう。
なんて言うとエンジニア経験が豊富な方々から、そんなの当たり前じゃないか、という反応をいただくかもしれません。データを扱うとき、私の場合だとjavascriptやSQLなどのコンピュータ言語を扱うことが多いのですけれど、その中で例えば「DATA」と「data」は全く異なる値として基本的には扱われます。
なので、特定の文字列を含むデータを探したり、特定の文字列をもとに処理の条件分岐を作成したりする場合は、大文字小文字のレベルで一致してくれたデータでないといけないという点に注意しなければいけない、ということですね。
以前、私が最初に仕事でjavascriptを扱い始めた頃、それまでこういった言語に触れる経験が全くなかったので、よくこういった大文字小文字のミスをやらかしてしまって思うような結果が得られない、といったことを繰り返していました。今ではこのあたりの感覚はある程度染みついてくれた、と思うのですけれど、もちろん今でも注意はしなければいけないですね。
モバイル広告ID(IDFA、ADID)が絡むケースは特に注意
とまぁここまでは本当に初歩的な話になるかもしれませんが、これがモバイル広告IDの話になってくると、この大文字小文字というのは少しややこしい話になってきます。
が、まずはそもそも「モバイル広告ID」とは何か、についても簡単に触れておいた方がよいかもしれません。
モバイル広告IDとは、iOS、ANDROID OSがインストールされたスマートフォン端末ごとに付与されている固有のIDのことを指します。主にiOS端末におけるIDFA、ANDROID OSにおけるADIDの2種類が存在します。
【モバイル広告IDの種類】
- IDFA: Identifier For Advertisingの略。iOS端末で用いられる。
- ADID: Android Advertising ID、またはGoogle Advertising IDの略。ANDROID端末で用いられる。※GAID、AAIDなど、他にもいくつか呼び方がある。本稿ではADIDと呼称。
このモバイル広告IDは各端末で必ず1つセットされています(リセットは可能)。名前に「広告」とある通り、モバイルアプリ内でのターゲティング広告の配信に使われることが多いですが、アプリユーザーの分析に用いたり、モバイルアプリの動作をコントロールする(例えば同一端末の判別)などに用いられることもあります。
※余談ですが、スマートフォンだけでなく、スマートTVもOSとしてiOSやANDROID OSをインストールしているケースが多く、そこでも同様にIDFA、ADIDが活用されているケースがございます。
つまり、かなり活用範囲が広いIDデータであり、そのためモバイルアプリ周りのマーケティングでデータを扱うとなると、結構な頻度でこのIDFA、ADIDのデータに触れることになるわけです。
【モバイル広告IDの形式】※この記事を書いている2021年8月時点
- IDFA: 36桁、半角英数と「-」の組み合わせ (アルファベットは大文字)
- ADID: 36桁、半角英数と「-」の組み合わせ (アルファベットは小文字)
で、実はこの2つのIDは形式がよく似ています。上述の形式が、モバイル端末から実際に取得した際のIDFA、ADIDの一般的な形式です。どちらも桁数が同じで、使われている文字の種類も一緒。ただ、アルファベットが大文字か、小文字か、が違うのみです。なのでパッとみただけではそのIDがIDFAかADIDかはわかりづらかったりします。
ははぁ、わかったぞ、と。ここまで読んでいただいて、話のオチの予想がついた方もいるかもしれません。IDFA、ADIDを扱うときは大文字のデータか、小文字のデータか注意しましょうってことだな、みたいに。はい、もちろんそれも注意点になります。
ただ、話はそれだけに終わらなくて、もう少しややこしいところに入っていきます。その原因はプラットフォームやツールによってこのIDFA、ADIDの扱うルールがバラバラである、ということなのです。
モバイル広告ID(IDFA、ADID)の扱いがツールによって違う
例えば広告配信用にIDFA、ADIDデータを広告配信プラットフォームに連携したりするのですが、連携先によってIDFA、ADIDの形式に指定がある場合があります。
私がこれまで経験したパターンだと、
- IDFAは大文字、ADIDは小文字で受け付ける(取得時と同じ形式)
- IDFAもADIDも大文字で受け付ける
- IDFAもADIDも小文字で受け付ける
- 大文字、小文字、どちらでも可
の4つありました。このあたりはルールがある日いきなり変わったりもするので、具体名を併記することは避けますけれど、こんなふうに連携先によって扱い方がまちまちなので初回連携の際はIDFA、ADIDの形式に指定があるかどうかはしっかりと確認しておく必要がありそうです。
そして配信側でルールがバラバラということもあって、逆に分析用に配信ログや計測ツールなどからIDFA、ADIDのデータを受け取るときもこのあたりは統一されていない印象があります。ADIDが大文字で渡されてきたり、はそんなに珍しくないですね。
私の経験だと、あるとき、ユーザー分析で2つの異なるデータをIDFA、ADIDを軸に掛け合わせを行う必要があったのですが、同じ端末のデータが多数含まれているはずなのに掛け合わせの件数が非常に少ない結果になってしまって困ったことがありました。それを試しに大文字小文字をそろえてみたら一気に件数が増えたのです。ユーザー分析でこのあたりのデータを扱う際も、IDFA、ADIDの大文字小文字は事前に揃えておく、ということに注意する必要がありそうです。
モバイル広告ID(IDFA、ADID)の取得の際はユーザー許諾に注意を
話は少し本筋からそれますが、近年、このモバイル広告IDに関しては取得方法についてもプライバシーに配慮した取得が求められるようになっています。これもモバイル広告IDの取り扱いにおいては注意する必要があるでしょう。
すでにIDFA(iOS)の方では、iOS14.5以降からATT(AppTrackingTransparency)というフレームが導入され、しっかりと事前にユーザーの許諾が得られない限り、IDFAのデータが取得できないような仕組みへと変わっています。ADIDの方ではまだそういう仕組みはありませんが、いずれ同じような仕組みが導入されることになるでしょう。
データ連携でIDFA、ADIDのデータに関わる際は、それらが適切なユーザー許諾を得たうえで取得されたものか、についても意識をしておくのが今後は望ましいと言えると思います。
● まとめ
- プログラミング言語などの世界では大文字小文字が異なるデータは別物として扱われる
- IDFA、ADIDの連携では連携先によって大文字小文字などの形式の指定が異なる
- ユーザー分析でIDFA、ADIDを扱う際は、事前にそれらの大文字小文字を揃えておくとよい
- なお、IDFA、ADIDを扱う際は適切なユーザー許諾が得られているかどうかにも意識する
弊社では、新規データソースの連携方法の整理や実際の連携作業、開発といったことから、既に連携しているデータのトラブル、ご相談まで幅広くサポートしています。お困りごとございましたらお気軽にご相談ください。
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株式会社DataCurrent
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